「バックシャン」をウェブサイトで検索すると、
「後姿美人。実際には後姿だけが美しく、前から見れば不細工な女性を指す。
外来語ではなく日本でつくられた造語。バックは後ろ、背中。シャンはもともとショ
ーン、ドイツ語の美しいという意味で、バック・ショーンがバックシャンになった。
」とのことです。
初めてこの言葉を耳にしたのは、入社3年目で営業部門にいた頃でした。職場の若い
女性社員の後ろにまわって、2年先輩が「こいつはバックシャンだ」といいました。
当時まだセクハラという言葉が存在せず、接待や預かり金が何の問題もなかった頃で
、サラリーマンは気楽な稼業があたりまえの時代でした。バックシャンという意味も
わからず、それに、何よりも仕事が面白しろくて休日出勤が苦にならなかった青春時
代ですから、女性の後姿を楽しむような遊び心に目覚めてはいませんでした。フロン
トは見なくていい、バックだけでいいなどという枯れた心境になるには、社会人とし
てそうとうの年季が必要だと思います。
話が変な方向に行きそうですが、早朝ウォーキングで、いつも颯爽とジョギングで追
い抜いていくご婦人がいます。5時45分には帰宅されてしまうので、冬の間は暗闇
のなかで追い越され、そしていなくなっていました。4月になり日の出が早くなり、
6時前でも十分に明るくなってきました。先週、とうとう顔を見てしまいました。昔
先輩が口にしたバックシャンでした。幸運の女神には後ろ髪がないといいます。バッ
クシャンはポニーテイルなので、女神ではないのですが、元気に軽やかに走っている
後姿は素敵でした。「泣いているのか、笑っているのか、後姿の素敵なあなた」とい
う歌がありますが、まさしく「ふりむかないで」ということです。残念ながら、この
定説にも例外があるということを、いまだに路上で証明してもらっていません。
後姿を鑑賞するだけならリスクはほとんどありません。「どこ見てんのよ」と元気な
オネーチャンに脅かされることもないでしょう。実業の世界でも、前を走っている成
功者たちの背中を追いかけている間は、夢と期待で楽しい気分が味わえます。しかし
ながら、状況が変化し、前を走っている人のスピードが落ちたり、棄権したり、こち
らのスピードがあがったりして、追いついたとき、「バックシャン」の顔が見えてし
まいます。ヴィーナスに昆虫の顔がついているかもしれません。昆虫の顔だったら、
生者必滅会者定離の理、一瞥しただけでその場を走りぬけていきます。
次は自分の番です、昆虫の顔にならないように気をつけないといけません。
◆あとがき
「食い逃げされてもバイトは雇うな」というタイトルを見て、「さおだけ屋はなぜつ
ぶれないのか?」の著者の2年ぶりの書き下ろしを読みました。本文30ページに連
番管理という会計用語がありました。早速、自動発番する仕組みを帳票レイアウトに
組み込んで出力することにしました。