金言−392:不徳のいたすところ

5月20日、東京都八王子市と川崎市の女子高校生が新型インフルエンザに感染し
たことに関して、私立洗足学園(川崎市高津区)の前田隆芳校長は、渡米を中止し
なかった理由を会見で釈明しました。同校女子生徒6人と引率の女性教諭1人の計
7人が、5月11日に成田空港を出発し、19日に帰国。5月14~16日、米・
ニューヨークの国連本部で行われた学生による「模擬国連」に参加し、2人の生徒
が感染しました。

この校長は、ブタインフルエンザ感染のリスクを負い、渡米を選択しました。「一
般の方に迷惑をかけないよう、行かせないという判断もあったが、弱毒性というこ
とも総合的に考えて、子供たちが得るものは何物にも代え難いという思いがあった
。このようなことになってしまい、わたしの不徳のいたすところ。みなさんにご迷
惑をおかけした、申し訳ありません」と陳謝しました。

子供たちの父兄と学校が感染リスクを冒して渡米させたリターンは、期待できる最
善のものではなく想定された通常の結果=感染でありました。職業コメント屋さん
の後講釈を聞くまでもなく、この学校の教職員はリスク管理の甘さを学習したこと
でしょう。私企業なら、このような意思決定者は、リスク管理の知識と能力を疑わ
れます。この能力は、昨今の勤め人の世界では重要な資質として評価されます。米
国政府は、自国の自動車会社の次の経営陣の選択基準に加えています。

「不徳のいたすところ」とこの校長さんはいいましたが、「徳が足りない」などと
いう道徳上の問題ではなく、法人組織の経営判断の問題であり、ハイリスク・ロー
リターンの効率の悪い選択をしたことを学習しなければいけません。イメージダウ
ンで来年の入学受験料収入が減るのではないかと、この学校に投資している人たち
は心配しているかもしれません。

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