金言−334:今が一番

朝日新聞に掲載された、音楽プロデューサのミッキー・カーチス氏のことば。
「あの頃は良かったとか、僕は絶対思わない。いつでも、今が一番好きだから」

「今が一番」と聞いて思い出したのは、昔アテネフランセのネイティブ英語教師が
好きなことばといっていた「刹那主義」です。受験戦争に明け暮れていた当時の高
校2年生には、このことばの意味が理解できませんでした。瞬間、瞬間を生きると
いわれて、何て切ない生き方をする人だろうと否定的な感覚を持ったことを思い出
しました。刹那的に行動することは、出たとこ勝負、無計画、無責任であると思い
込んでいました。

過去にとらわれず、不確かな将来のことを考えず、ただひたすら、今を充実するこ
とが大切という刹那主義の考え方は、現実逃避の否定的な生き方ではないような気
がしています。ボケ始めた晩年の父が、「今この瞬間を永遠に閉じ込めるのが写真
だ」といって、高価なカメラをもって花や風景を撮りに毎日近くの公園に出かけて
いました。

「良かったあの頃」とそれ以下にはなってほしくない将来が今この瞬間でつながっ
ているはずですが、この先、あの頃より良くなると楽観的に考えることがむずかし
い世の中になっています。右肩下がりなら、常に今が一番です。明日は今日よりさ
らに悪くなるなら、今日を楽しむほうが賢明です。もう一度体験できるわけもない
「良かったあの頃」とどう転ぶかわからない「不確かな明日」の交差点の中で、逡
巡して立ち止まったりふりかえったりしてはいけません。時々、信号無視をして突
っ込んでくる悪いひとが現れますので、できる限り左右をよく確かめて、不確かな
明日に向かってさらに大胆に一歩踏み出したいものです。

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