金言−333:営業スタイル

売るモノによって営業マンの営業スタイルは異なります。話し方から服装まで、い
かにもそれがふさわしいというお約束の定番の外形が、業界別にあるようです。こ
れは、長年培ってきた企業風土みたいなもので、新人にとっては、すでにいる先輩
たちのスタイルを踏襲することが、違和感なくその業界にとけ込む近道であること
がわかります。

ずいぶん昔のことになりますが、社員教育の一環で当時流行ったビジコン(ビジネ
スコンサルタント)のセミナーに参加したことがあります。当時は都市ホテルに勤
務していましたので、主な営業内容は宿泊、宴会、レストランの3部門でした。い
までも覚えているのは、担当部門別に営業マンの話し方や態度が定型化していたこ
とでした。

旅行代理店を得意とする宿泊部の営業マンは、代理店のお得意様と軽妙なトークを
続け、相手がご機嫌になったところでクロージング。気安く案件をまわしてもらう
ようセールスをかけます。何気ない日常会話の中でビジネスマターが発生していき
ます。刑事もののドラマで、若いプロファイラーが米国留学で学んだ技術を使い、
タメグチをききながら事件の核心に迫っていくような感じです。

宿泊セールスがとってくるグループは、確度が高いとはいえません。手仕舞いまで
は、話半分といったところです。キャンセル料が発生する直前までは、代理店の担
当者は、複数のお友達営業マンにいい顔をしているのかもしれません。ですから、
宿泊予約係は宿泊セールスの案件を確度の低い案件と評価します。ただし、営業は
結果を求められますから、案件がすべてキャンセルにはなりません。キャンセル率
は高いですが、予約件数がキャンセル以上に多いので、売上に貢献します。したが
って、予約係は案件のトレースを怠るわけにはいきません。確度の低い予約をその
ままにしておくと機会損失となるからです。

一方、宴会セールス特に法人向けの営業マンのスタイルは、カジュアルな宿泊セー
ルスとは異なり、セミフォーマルといったところです。大企業の事務方を相手にす
ることが多いので、案件はよほどのことがない限り、途中でキャンセルになったり
競合他社に移ったりすることはありません。よほどのことを営業マンがしない限り
ということですから、宴会実施当日まで、営業マンがすることはマニュアル化され
ています。それが硬派な営業スタイルになる一因となっているようです。宴会受付
係にとっては、宴会セールスの持ち込む案件の確度は高いものです。ダブルブッキ
ングは命取りになります。

そしてレストランセールスですが、これは成功事例を知りません。レストランの黒
服がスーツに着替えて昼間お得意様をまわることが多いのですが、なぜかうまくい
かないようです。宴会と異なり、その日の気分で、食べたいものを食べたいところ
で食べたい人と一緒にというものですから、行くと決まった時に利用可能なレスト
ランを選ぶわけです。営業マンにすすめられて予約するというものではないことが
多いような気がします。

世の中、右肩上がりの時は素人営業でも会社はまわっていきますが、景気が踊り場
になるとどうでしょうか。成約までの確度は高くないが、とにかくビジネスチャン
スを発生させるスピード感のある営業マン(宿泊セールス型)と案件の絶対数は少
ないが成約率が高い営業マン(宴会セールス型)。可能なら、この両者のいいとこ
どりをしたいものです。

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