金言-1090:勝てば官軍

昔々、東京港の埋め立て地で「世界都市博覧会」というイベント計画がありました。
疫病感染拡大のなかの東京2020強行とは違い、このイベントを中止するという公約を掲げた候補者が都知事に就任し、公約通り博覧会は中止になりました。
ただし、開催に向けて多くの私企業が先行投資をしていました。たとえば、開催会場予定地にホテルがふたつ建設されていました。一つは、イベント中止で集客の見込がたたず、開業を見送りました。もう一つのホテルは予定どおり開業しました。
ここで明暗が分かれました。
博覧会が中止されたにもかかわらず、埋め立て地に開業したいくつかの複合施設が大人気となり、にわかに活況を呈し、そのおかげで開業したホテルは特需の恩恵を受けました。
開業を強行したホテルの経営陣は、開業時のビッグイベント中止で集客の期待ができないため、赤字を覚悟しました。そこで傷口を広げないためホテルオープン時の幹部スタッフのコストを削減しました。業界でささやかれたのは、一流ホテルの2軍のスタッフを採用して人件費を抑えたということでした。
大手ホテルから転職したB級ホテルマンは2階級特進のポストを手に入れました。
開業すると、このホテルは大化けし連日たくさんのお客さまが足を運びました。会社としては、想定外のうれしい誤算であったことでしょう。割安で採用できた、一流ホテルで教育された即戦力のスタッフを最大活用し、業績は大盛況となったので粗利益は膨らみました。
もちろん、ホテルが話題になり、人が集まり、儲かるとすべてが吉となります。スタッフのモチベーションは上がり、シェイプアップされ、人材育成が急速に進み、経営陣も従業員もWINWIN、すべてめでたしめでたしとなりました。
営利企業ですから、儲けに貢献した部門長は業界でも高い評価を受けます。過去のキャリアとか出身ホテルとかは問答無用です。飛ぶ鳥を落とす勢いのスーパーホテルマンに変身したわけです。当時のホテルマンはすでに年金暮らし、古き良き時代の話になりました。

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