昔話です。
新卒入社の勤め人稼業に落ち着きが出てきたころ、少し生活に余裕ができ、マイホ
ーム購入を考えたことがあります。誰が言ったのかすっかり忘れましたが「家に縛
られる」ことを嫌うといった人がいました。家を買うと転勤になるとか、身軽に転
職できないとか、先々のローン支払いの不安とかいろいろネガティブな話です。ロ
ーンの支払いに不安はかんじませんでしたが、買った当時の家庭環境がローン完済
まで維持できるか先行き不透明感はうっすらと感じました。購入不動産の住人のも
めごとが深刻になり解散を考えたとき高額物件のローン残債は足かせになります。
不動産に縛られて望ましい意思決定が妨げられるリスクを嫌いました、そこで買い
を控えました。
阪神大震災のときは、前年に芦屋のマンションを引き払って東京にもどっていまし
た。当時の仲間は倒壊したマイホームのローン残と再建の新規ローンで二重苦だと
いっていました。地震が含まれた保険は一般ではなかったし阪神での地震は想定外
でした。
先週の長野出張で、令和元年台風19号の洪水で不動産に回復困難な被害を受けた人
の話を聞きました。
浸水した土地は買い手がいないので、転居もできず壊れた家を修復して住み続ける
とのこと。
今まで商いの現場では持ち家と借家住まいでは取引の場で信用に差がでるといわれ
ていました。東日本の震災・人災以前の話です。自分なりの経験では、その定説は
いかがなものかと思っています。マイホーム取得の長期ローンは少なくとも投資で
はございません。マイホーム保有で配当金がでるわけでもありませんし、買った金
額で売却できれば幸運です。勤め人なら勤め先が30年持つかどうか不透明、雇用に
ついても同様です。マイカーは即売却可能で換金できますが、マイホームは売りた
いときにすぐ売れるものではありませんし、不動産バブルでもないかぎり換金可能
価格が毎年下がっていきます。自然災害に不運にも遭遇してしまうと、修理して原
状回復しても売却は困難となります。
結局、不動産に縛られてしまいます。これを嫌ったのはラッキーでした。それに人
生、旅の終わりには所有したモノはすべて放棄することになっています。
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