金言−312:一瞬を永遠に残す

スキーのジャンプ競技で、選手は急なスロープを滑り降り、踏み切って空中に浮遊し
た一瞬、失神状態になるそうです。そして次の瞬間意識がもどり、着地に向けて態勢
を整えます。意識が戻るまでの時間の長短が滑空姿勢や到達点に影響を与え、成績が
決まるといいます。

野球でもゴルフでも、ボールを打つ動作で、テイクパックからフルスイングに変わる
ときに動きが止まる瞬間があります。動から一瞬の静、そして豪快な動という一連の
流れです。そして、予想以上に良い成績を上げたプレーヤーに、例えば、ホームラン
を打ったときのことを聞くと、覚えていないとか、何も考えていなかったという返事
が多いと思います。もしかしたら、ジャンパーと同様、インパクトの際、一瞬意識を
失うのかもしれません。

この一瞬を数多く経験したプレーヤーが、勝利者です。この人たちは、1日を24時
間プラスN倍の瞬間で暮らしているはずです。勝てないプレーヤーには、無縁の世界
です。

天気の良い早朝に紅葉始めた公園や里山に、重くて高価なカメラを抱えて年配者が集
まります。彼らの中に、父も含まれていました。「一瞬を永遠に残す」といって、写
真を撮っていました。あの時のひとこと、ドキッとさせられたことをいまでもよく覚
えています。

◆あとがき

海外との取引で、通信手段がテレックスからファックスに移行した頃の話です。テー
プに穴をあけて機械を通すことで、英数字が相手先に打ち出されていました。あの鑽
孔テープは、慣れると点字のように読むことができました。大きな音でテレックスが
打ち出されているときに、キーボードを使って、返事をすることもできました。その
後、通信料金が安く操作性のいいファクスが導入されました。これは、手書きで送れ
るので、受信した文書にコメントを書き加えて返信するなど、意思疎通のスピードが
向上しました。

インターネットに常時接続する環境が整った現在では、ファックスが電子メールに変
わりました。これは、ファクスよりさらに通信料金が下がり、操作性も一段と向上し
ました。

ところが、テレックスがファックスに替わりそして電子メールに替わっても、変わっ
ていないことがあります。返事をだすのは、受取人ということです。受信者が返信を
しないかぎり、コミュニケーションは成立しないということです。昔は催促のファッ
クス通信紙が相手先にたまりました、今は催促の電子メールが相手先のパソコンまた
はメールサーバーに溜まるだけです。

便りがないのは悪い便りです。しびれを切らして、電話をすると、決まって返事は、
「メールは見ている」です。時間がないのか、回答する気がないのか、キーボード入
力が苦手なのか、いずれにしろ、返信を待たされている者は、次ぎは、こいつとは付
き合いたくないと思っているにちがいありません。さらには、評判を落とした格闘ビ
ジネスの父親と同様、謝らない人が増えました。謝ったら負けは、欧米のビジネス習
慣だから日本でも通じると思い違いをしているのかもしれません。

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