金言−746:賃貸住宅で助かった

団塊の世代のうち、バブル期に蓄えた資産をその後の誤算で激減させてしまい、今
ではマイホームのローン返済に苦しんでいる世帯数が2万以上あるとのことです。
3000万円から4000万円程度の35年ローンを組み、残り数年を残して、年金生活では
返済のめどが立たたないことがわかり、任意売却でマイホームを手放し、賃貸住宅
に引っ越すというケースが増えているそうです。あとほんの少しというところで、
タスキをつなぐことができなかったアスリートのような悲しい場面です。
団塊の世代は、右肩上がりの高度経済成長とバブル景気を堪能した後、20年続く不
況、リーマンショック、東日本大震災、放射能汚染と、人生後半は誤算続きです。
「家は人を縛る」という某有識者の話を聞き、20代前半には頭金程度の蓄えはあっ
たのですが、家は買わないことにしました。そのおかげで曾祖父の時代に我が家が
経験した倒産・夜逃げをかろうじて回避することができました。
サラリーマンとして年2回のボーナスと定期昇給を織り込んで35年ローンを組む危
うさは35年前にはありませんでした。大企業が倒産するとか、リストラがあるとか
、年金生活が期待できなくなるとかは想定外でした。そしてもう一つ大事なことを
忘れていました。35年間事故も大病もなく健康に生き延びて、収入を確保するとい
う前提条件です。今資産がいくらあるとか正社員であるとか、そんなことを無意味
にしてしまう誤算の事象です。高額な治療費のかかる闘病生活や交通事故での賠償
責任など、生ある限りまとわりつくリスクです。債務者が生命保険で債務完済とい
う救済方法もありますが、これは家を買った本人が保険適用条件にみごとに合致す
るような有事に遭遇しなければいけません。もちろん健康で穏やかな暮らしとは無
縁な晩年となります。
自分が賃貸住宅を選んだ理由は、その時々の勤務先と収入と家族構成に応じて分相
応の住む場所と広さを選べることができるという身軽さでした。住宅ローンがある
ことで、人生の節目節目での選択肢を減らし意思決定に制限を設けることを嫌いま
した。ただこの一念でマイホームを諦めました。
父が遺してくれた資産はほとんど使い果たしましたが、それでもまだ多少の余力は
あります。儲かっていないが損はしていないということで、終業のベルがなるまで
心穏やかに、でも若干したたかに暮らしていきたいと考えております。

関連記事

PAGE TOP