金言−400:社長秘書嬢のご機嫌をうかがう

1)種島型
最も尊敬できない上司のもとで、何をしても評価されない冷遇された時期がありま
した。

その人は役付き役員でしたが、秘書業務は社長秘書が役員秘書として兼務していま
した。この秘書嬢が曲者というか、難しい女性で、社長秘書の職務上の効能を活用
して、年長の社員や取締役に無礼な言動を繰り返していました。被害を受ける者に
とっては無礼な態度なのですが、本人にとってはきわめて当然な振る舞いであった
ようです。

あるとき、最も尊敬に値しない上司がこの難しい秘書嬢に雑用を頼んだところ、
「ご自分でなさってください」という応えがかえってきました。この時この上司は
顔色を変えましたが、言葉に出さず依頼を取り下げました。

そばで見ていた社員は、「また秘書嬢がつけあがる」とか「だらしない役員」と感
じました。役員相応のリアクションがかえってこなかったので当の本人はがっかり
したはずですが、一般社員にはわからない社内の事情が反映されたと感じました。

たとえば、役員が使う交際費等の中身を社長秘書は把握しているので何かしらの弱
みを握られていたのかもしれません。とにかく、一般的に社長秘書のご機嫌を損ね
ると社長のご機嫌を損ねかねないというリスクを負うことを嫌ったのが主因と思っ
ています。

2)鉄道型
某私鉄を傘下にしていたファミリー企業のオーナーには専門分野と特定地域を担当
する秘書がたくさんいました。なかでも、本社で非公式な分野も担当する秘書の一
言は従業員の将来を左右しかねない影響力がありました。

前述の種島型の秘書嬢と正反対で、この人は一般社員との接触は希薄でした。した
がって、つけ上がるとか無礼とかいう「小生意気な小娘」ではありませんでした。
年齢はほとんど一緒ですが、鉄道型の秘書嬢には、見えない力がありました。秘書
嬢の一言がオーナーの意思決定に影響を与えたからです。特に人事についての秘書
嬢の感想は決定的でした。

それがわかっているので、オーナーが事業所を視察するときは、事業所の責任者は
オーナーと秘書嬢しか目に入りません。特にオーナーが商談中のときは、秘書嬢の
動きに神経をとがらせます。オーナー不在で秘書嬢が出席する宴会では、事業所の
責任者は招待客より秘書嬢の接遇を最優先していました。

オーナーへの一言が会社の重要な意思決定に影響を与えていることを自覚していま
したので、この秘書嬢は事業所の責任者より慎重で思慮深い振る舞いをするよう心
がけていたにちがいありません。若くして、権力の先にある責任を身に刻んでいた
ようです。

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