金言−617:人の世は所詮ボウフラの浮き沈み

人の世は所詮ボウフラの浮き沈み、浮いたと思ったら沈み、沈んだと思ったらまた
浮き上がる。噺家の一節。

まだ
一般家庭に水洗トイレが普及していない頃
家の前の道路にセメントで作ったゴミ箱があり、分別無しのごみ収集していた頃
未舗装の通学路を、冬は霜柱を踏んで登校していた頃
茶の間の火鉢で一家が暖を取っていた頃
テレビが白黒の頃

この頃なら、ボウフラは、神社の水たまりや防火用に貯めてある学校の水槽で見る
ことができました。
今では、市街地でボウフラをほぼ見られなくなりました。水たまりがありません。
池はあっても、金魚などにたべられてしまいます。それに、防虫スプレーが普及し
蚊は退治されやすい環境です。

そういうわけで、ボウフラの浮き沈みは、今ではお目にかかることのない日常生活
のシーンなのです。比喩として使っても、現実味がなさそうです。それに、一度沈
むと二度と浮き上がるチャンスがやってこない世界がふえました。勤め人は、会社
で失敗するとリストラの候補リストに登録されます。孵化できないボウフラ人間が
増えました。

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