金言−280:一身専属の財産

桜花
新年度
人生の節目

4月は、元旦に続いて、何かを思うきっかけを与えてくれます。子供たちの入学、進
学、入社、自分自身の公私にわたる立場の変化などさまざまな現実が、3月から4月
の年度替りで目に見える形になって目の前に出現します。

2000年のITバブル崩壊前夜、「第2の創業」を掲げ社名変更をしたり若手や女
子を登用したりしてIPO(株式上場)を実現し、株価=会社の価値とするトレンド
が一世風靡しました。その後の新興IT企業バブル崩壊は、ホリエモンや村上の欽チ
ャン自らが虚業のビジネスモデルの限界を、官憲に背中を押されながら一般株主にも
理解できるような形で明らかにしてくれました。

五木寛之著の「林住期」によると、人生25年を1Qと数え、3Qを「第3の人生=
現代人の黄金時代」と位置づけています。この「第3の人生」は、前述IT企業の「
第2の創業」の考え方とは異なります。IT企業では、過去は否定されることが多い
です。既存の技術の限界や弱点を、ニューテクノロジーが克服します。既存の技術の
延長線上にないニューテクノロジーは、陳腐化した技術とそのエンジニアを否定し、
「新しい酒には新しい皮袋を」用意することを当然のように宣言します。さらには2
Qを経過した従業員は「第2の創業」の担い手ではないというのが、世間の定説とし
て、経営者の経営判断の定石に追加されたようでした。

一方、「第3の人生=黄金期」は過去の否定でもリセットでもシャッフルでもありま
せん。ましてや、1Qそこそこの小僧たちには無縁の時代です。1Q・2Qと営々と
準備され磨きあげられてきた個人の経験と知識・匠の技などが財産となり身を守る武
器となります。個人の財産である暗黙知は他人が引継ぎできるようなものではありま
せん。跡継ぎは先代が積み上げた有形の知恵と手法を継承・共有することはできるで
しょうが、先代が出会った時と所(知恵の現場)は追体験できません。暗黙知は一代
限りです。これを3Qに突入している団塊の世代の方々は、一身専属のかけがえのな
い財産としてそれぞれお持ちなのです。

時は、流れない、積み重なるといいます。今日あるのは昨日までのおかげです。明日
は、今日の結果次第です。明日は未知にちがいありませんが、今日まで積み上げた何
かしらの延長線上に現れる確率は高いと想像します。もしそうでなかった場合、株屋
さんが後講釈で使う株式チャートの「だまし」ということでしょうか。

◆あとがき

3月中旬、誤ったデータに基づいて桜の開花予想を発表したといって、気象庁は予想
を訂正しました。正しいデータに基づく予報であれば必ず的中するのですか。予想の
精度はあがっているでしょうが、はずれもあります。そこまで内情を明らかにしたり
訂正したりする必要があるのでしょうか。思うに、天候に影響される商売をしている
会社向けの保険を売っている保険会社に対して、情報開示して説明責任を果たしたの
かもしれません。

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