201912-407:年の暮れに思い出すこと

勤め人全盛期の頃、年末は何となく緊張していました。
スイス国籍のCEOがアジアで休暇を過ごし、帰路に日本に立ち寄るからです。それも元旦からです。この人は早稲田に留学経験があり、独仏英に加えて日本文化にも理解があり日本市場に格別の興味をお持ちでした。そのため、正月の成田にピックアップに行き、東京から京都大阪のマーケットリサーチをこなし、子会社と協力会社の評価をして帰国します。1年間の子会社スタッフの待遇に大きな影響を与えるイベントで、日本での旅費・滞在費は子会社が負担します。オークラの前の施設にトランプさんがやってくるようなもので、年に一度、CEOと一対一で渡り合う正念場でした。

この人がある年の正月にその年の12月に退職すると社内で発表しました。1年も前に予告するとは驚きで、信じがたいものでした。そして1月から組織変更や人事を刷新し、社内の有力幹部を更迭し退職に追い込みました。秋にはこの人の地位を脅かす力のある幹部はいなくなりました。そして発表どおりに年末にいなくなりました。
この間の出来事は社史には掲載されていません。あの年の暮れは、暗黒時代のピークでありました。今こうして、つつがなく暮らしているのは、有力幹部の傘下でなかった良運だと記憶しています。

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