金言−470:みどりの使徒

1967年冬。横浜三春台にある私立高校の学級文集「つどい」より

「みどりの使徒」

―自分の無知と愚かさを以て―

僕は家を出た。予想外に外は明るく、人通りはない。空を見た。黒い。星は輝きを
失っていた。勘違いをしていたようだ。環境はそれほど良くなく、人間は良心なん
か持っていない、もはや。大馬鹿野郎が変人を載せてすっ飛んでいく。不愉快な雑
音を残して。かわいそうにあいつらは。でも何がかわいそうなのだ。どこが劣って
いるのか。・・・・どうでもいい。真理はそれだけで必要十分なのだ。特別にあれ
これと解説や弁解を加えねば、その真実性が動揺するという代物ではないのだ、真
理は。僕はこれに満足してさらに歩み続けた。僕は、自分の無知と愚かさを以て、
単なる凡人にすぎない凡人を乗り越えた。乗り越えられた凡人は、理解できないで
いた。同様な無知と愚かさによって。しかし彼らには弱さがなかった。彼らは無知
の故に強かった。彼らを乗り越えて進んだ。

―輝く蒼い星―

明るい照明、暗黒の空に輝く蒼い星を見た。理解できなかった。感動に震え、涙を
流した。遠い昔を思い出す。幸せだった、独りでなく憂愁もなかった。clearな青
空とcoolなみどりの世界を。あの時の星を、今、輝く蒼い星に見ている。それは、
ただの星でないただの星であった。突然、すがすがしい気分のうちに全てのものが
崩れ去った。あるのは自分とあの輝く蒼い星のみ。時間の流れが、優雅なうちに止
まった。ただ永遠が流れている。これから何が始まるのか。星が近づいてくる。何
ということだ。星は沈黙のうちに蒼く輝いた。永遠とはこの事だろう。永劫回帰や
無限が永遠かと思ったが、そうではなかった。蒼い輝きのうちに永遠を見た。既存
の価値観が意味を持たなくなった。価値は転換され、永遠の時が流れていた。

―蒼い星、天と地の仲保者―

死は一人の人間を滅ぼすのに充分である。愚かさの故に悩み、弱さの故に恐れおの
のき逃げまわる。死はその強さによって我を捕え、我不安をもって、我を奴隷とす
る。それでも我は行きなければならない。生き続けなければならない。死ぬまで生
き続けて人は少ないだろう。我はその一人となって生き続けなければならない。苦
悩と不安のうちにでも。生への執着を失うことのないように、星は輝く。蒼い輝き
には憐れみの心はない。女々しい感情はない。しかし力があった。永遠に輝くその
輝きが。我を偉大にする不安と苦痛が蒼かった。それからは不安と苦痛のうちに生
活することになった強くはなかた故に、しばしば凡人の道を求めた。その度に弱さ
が不安と苦痛の生活に我を連れ戻した。蒼い星、それは天と地の仲保者だった。

―美しい天使―

いつの頃か、美しい人を追い求めるようになった。世に美人は多くいる。しかし追
い求めるに価する美しい人は少ない。美人と美しい人との無限の隔たりがそこにあ
る。美しい人、それは代替不可能でなければいけない。美しい人がいた。それは手
に触れることのできない、近くにあって無限に遠く、不可解な故に、この上なく美
しかった。沈黙する天使、我精神を内面化した。それは、存在しないが故に追い求
めるあの詩人の乙女のようだ。長い長い沈黙の極みに、我ために銀の涙を流した天
使。美しかった。天使は我を偉大にした。希望と勇気を与え、美を与えてくれた。

―非凡なる凡人となれ―

我は美しさを追い求めるあまりに、世の醜さ汚らしさ、愚かさを探し求めた。美を
より美しくするために。それは容易であった。いたるところに見つけられた。また
、これらには目を背けて、青春を、平和を、繁栄を謳歌している愚かな、女々しい
馬鹿者を見つけた。孤独と背信、苦痛と憂愁のうちに生きる者はより偉大な充実し
た生活をし、最後に無に帰る。彼は無常のうちにまどろむ。人は言う、「仲間と一
緒に折り合っていけない人間は敗北者であり例外者だ。共同生活に敗北しやむなく
自らを孤独の生活に押しやるのだ。」それは違う。役にも立たない仲間の忠告、的
を外した人生論、安易な妥協。これを言うのか、折り合って生きることを。助けに
もならない助けを求め、甘受し、ひとりでは孤独だからと、群れにもぐりこみ、み
んなのすることを自分もすることによって安心を得る。一体他人がどれだけ助けに
なるのか。悩める者にどれだけのことができるのだ。他人に。共に悩んでやれると
でも思っているのか。だれの助けにもならないで独りで生きるには凡人である凡人
にはできない業である。天使がいう、「非凡なる凡人となれ、すでに歩みは始めら
れた」。

―EVER GREEN-

青空とみどり。clearな青空とcoolなみどりにおけるまどろみ。
道は一本ではない。
目前にはいくつもの道がある。どの道を行くのもfreeだが、歩むべき道は唯一だ。
僕は勘違いをしていた。あの道を進まねばと思っていた。しかし、道は我を拒み、
我は理解できなかった。思いあがっていた。何者であるかのごとく思いあがり、無
常に浸り、夢を見た。今や万物は沈黙を破り、目的に向かって動き始めた。もはや
立ち止まってそれらを甘受できない。不可解や矛盾はそのままに、解を与えずにど
んどん進行していく。戸惑った。昔が懐かしかった。でも過去は過去、現実ではな
い。遅すぎる。Too late.道はただ前進するのみ。耐えられない、でも道はただひ
とつ、これしかない。叫んだ。「どうかいつまでも、いつまでも失わないで。お願
い、この言葉を忘れないで。」

Ever Green ―絶えることなきみどり― From everlasting to everlasting

―それでも彼らは人間だ―

わからない。平和にかわりに戦争を求めるとは。殺人を必要悪とする戦争、それは
いかなる目的、理由、美名の下にもその正当性を認めるわけにはいかない。人を殺
すのを認めた愚かな教皇もいるが、たとえ教皇であろうとも戦いに正当性を与えて
はいけない。何故なら力ない、第三者といってよい人々が必ず犠牲となるからだ。
異民族を、主義の異なる者を彼ら文明人はどう考えているのか。戦争に参加する者
はそれだけで充分に悪い、愚かな。武力をもってしか相手を殺さなければ、自分の
信じる主義を守っていけないのか。またそのように考えているのか。ああ愚か者よ
、真理はそれだけで充分なのである。彼らに教えてあげたい、肉親が毎日不安にふ
るえて生活していることの悲しさを、肉親を失うということがどんなに悲しいかを
。そんな悲惨な悲劇を演出してまで利益を守りたいのか。彼らにとってあなたの主
義が有用なのか。あなたにはその主義は有用だった。それゆえにあなたはこの上な
く繁栄した。しかい、それはあなたのことだ。彼らのことではない。あなたのが彼
らに通用するという根拠は何なの。彼らにとっては可能性なのだ。現実ではない。
あなたが断言できるのは、彼らに可能だというだけだ。それは真実だとはいえない
、それは現実ではない。そこであなたは国権を発動する。やはり同様な繁栄と平和
を求めて。あなたは人間性を失った。彼らは個人ではなく、木の的なのですね、あ
なたにとって。あなたは知らない、家族が戦いのたびに家を追われ、不安におのの
き、毎日死の危険におびえている悲しさを。何故ならあなたには、毎日充分な食事
と充分すぎる報酬と休暇が与えられているのだから。あなたの恋人、妻子、両親、
兄弟は、毎日健康で文化的で安全で快適な暮らしを楽しんでいる。それも戦火の届
かない海の向こうで。あなたの殺す相手はそれでも人間なのだ。現実を直視せよ。
ベトナムに平和を。

―異質者―

戦争、動乱、悪政、被害者として、被征服者としての生活体験は巧言令色で民に語
りかける権力者の言葉を絶対信用しない。力の恐ろしさを知る民は、だれよりも力
に対する渇望が激しい。平和思想がない。国際的環境と民主化が平和思想を許さな
い。惨禍は戦争によるのではなく、外敵侵入によると考える。そこでは、外敵は殺
すに価する。平和のうちに生活する者にとって理解できないものがある。しかし彼
らも同様に殺人の罪の重さを知り、我々以上に平和を渇望している。そして平和は
外敵がいては成り立たぬものなのだ。ベトナムに平和を。

―みどりの使徒―

数学のテストで点数がとれない病気。これを治すためには美を諦めねばならなかっ
た。永遠を求めるあまりに僕は病気になってしまった。どちらかを選ばねばならな
い。二人で通るには門は狭すぎる。永遠を求めるあまりに、僕は永い沈黙の極みに
永遠を諦めた。とても苦しかった。哀しかった。諦めることで僕は偉大になった。
天使は昇天した。銀の涙を流して、天使は輝く蒼い星を心の中に見た。輝きは永遠
に失われることはない。心の中に輝く蒼い星をもって僕はひとり、歩みを進める。
苦悩、不安、悲しみ、怒りに中を、我ひとり行く。星は輝きを増す、そして沈黙の
うちに言う「☆みどりの使徒☆」と。coolなみどりのうちに歩む、我は「みどりの
使徒」となった。みどりの使徒として命を賭けて未明の道を歩んでいく。

完の前、
了。

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