金言−458:ダウングレード・ダウントレード

最近放送された「ガイアの夜明け」で知財が話題になっていました。

1.中国の新興自動車メーカーのショールーム
70万円台の新型車を紹介する販売員は、「フロントがトヨタ、リアがホンダで人
気のあるスタイルと同じ」をセールスポイントにしていました。

2.ガーナの家電製品
ガーナでは、ほとんどが中国製の偽物。安くないと買えないので国民は中国製品に
満足しているそうです。携帯電話は本物より多機能で安いものもあるそうです。た
だし、本物そっくりですが、中身は劣悪な製品が混在しています。もちろん、消費
者は製造物責任法で保護されていませんので、リスクがあります。

番組は、メーカー側の商標権・R&Dコスト、知的財産権などを配慮した立場で制
作されています。商標権はともかく、同じ品質で低価格な家電製品を製造するしく
みについては関心がなさそうです。

===昔話です。===
まだサプライチェーンマネージメントが定着していない頃、中国の工場では素材・
デザイン・機能が本物にそっくりでラベルだけがちがうスーパーコピーが出荷され
ていました。

正規品を製造する工場で、同じ製造ライン・同じ材料・同じ従業員でつくっていた
ので、良質の偽物ができました。依頼主から支給された材料の余った分を使って工
場長の裁量で作っていました。正規品についているブランドマークをPBに換えて
出荷します。材料費にはほとんどコストがかかっていないので、低価格で正規品と
同じ素材・機能・品質の商品を出荷できました。製造できる量と流通経路が限られ
、大量に市場に出回るわけではないので、正規品の売上を脅かす恐れはなく、工場
長の小遣い稼ぎとして業界では黙認できるレベルでした。

ところが、昨今の偽物ビジネスは、低価格で低品質のコピー商品を大量生産・販売
するので、正規品メーカーと販売代理店の利益を圧迫しています。さらには、高機
能・高品質の製造が得意なメーカーは、ダウングレード品の製造は苦手という事情
がコピー商品の流通を一掃できない原因にもなっているようです。

経済不況で雇用環境も厳しい現在、ダウングレード・ダウントレードが必須となっ
ているなかで、高級ブランド品のライセンス権をどのように守るかという話題は、
とにかく代表選挙に注力するという政局と似ています。少しずれているような感じ
がします。

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