金言−368:廃鶏が金の卵を産みますか

最近よく話題になるおかげで、米国の自動車業界のことが少しわかったような気が
します。ビッグスリーの従業員に手厚い福利厚生などを約束する労働条件が、製品
原価を押し上げている一因であることを始めて知りました。米国車が売れないのは
、日独のクルマに比較して魅力に欠ける品質や燃費効率、R&Dの遅れなどが主な
原因だと想像しますが、価格競争力でも弱みをもっていたわけです。

前回、米議会の公聴会にビッグスリーの経営者はプライベートジェット機で首都に
乗りつけ、米政界や世論の強い批判を浴びました。米自動車大手3社を潰したら膨
大な失業者が発生するぞと議員たちを脅して、資金調達をねらったのかもしれませ
ん。日本のドラマでよくある、暴力団が白い大型ドイツ車で相手の玄関に乗りつけ
る光景に似ています。

このプライベートジェット機の費用もいずれ税金で負担するとなると、納税者の票
が気になる議員としては、いい顔はできませんでした。この3社のトップは、今回
は自社の環境対応車を使いました。しかし、議会ビル前でクルマの助手席から出て
きた彼らのスーツには、シワひとつなかったように見えました。前日に現地入りし
ているでしょうから当然ですね。せっかく長時間ドライブしてきたのですから、ど
こかにその痕跡を残して、多少の悲愴感をアピールするべきでした。「事業存続の
ためには、なりふり構わない」という必死の様子がトップにみえません。年俸1ド
ルでも1億ドルでも彼らのライフスタイルには影響がないのでしょう。米国の世論
の60%がビッグスリーの救済に反対していると報道されています。それでも、議
会は自動車会社を潰せないはずだと車屋さんたちは、まだ安心しているようです。

昔、日本が高度成長期の頃、借金を元手に事業規模拡大をしていた企業がたくさん
ありました。多角経営がビジネスモデルとして流行し、借金で不動産を買い、買っ
た不動産を担保に融資を引き出し、その資金でさらに不動産を買い増して事業を拡
大していきました。借金は財産だと豪語し、他人のフンドシで商売をしていました
。そして、返せないほど、借金が膨らんでも、「金の卵を産む鶏を殺したら利息も
とれなくなるぞ」と債権者を威嚇し、借金天国を楽しんでいたようです。結局、債
権者たちは、債権を放棄するかわりに金の卵を産まない「廃鶏」のような債務者を
ビジネスの表舞台から追放しました。

米国議会は、ほとんど破綻している米自動車大手3社の延命のために巨額の税金を
投入するかどうか、まもなく結論がでます。廃鶏に再び金の卵を期待するのは無理
がありそうですが。

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