金言−292:何とかしないといけない

もうすぐ参院選挙の街宣車でにぎやかになります。「このままではいけない、何かし
なければいけない」という現状否定と改革の自己PRを各立候補者が一様に開始しま
す。先日の日経新聞コラム「春秋」に「このままでは破綻してしまう」という内容の
一節がありました。

―「このままでは、破綻してしまう」と危惧する部下の声に上司は耳をかさず、貸し
出しを増やす行員が出世した銀行がありました。そしてこの銀行の名はすでに世に存
在していません。真珠湾攻撃の4ヶ月前に模擬演習で若手官僚が「日米開戦するなら
、日本の負け」と結論を出していました。―

このままではこの組織は危ないと思い、社内で改革に決起するのはクーデターのよう
なものです。経営陣は抵抗勢力をつぶしにかかります。経営者の意思決定に異を唱え
る従業員には左遷か解雇の処遇が待っています。そこで志ある人たちは、転職するか
起業するかの道を選びます。オーナー会社の将来的な破綻を確信して、居心地の良い
職場を去った人がいました。その人が危惧したオーナー会社の重大明白な危機は、損
切してから、17年後に現実となりました。

話は戻りますが、同紙のコラムでは、社保庁の公務員の中にも、「このままではいけ
ない」と思っている人がいるはずだと記されていました。実際どうでしょうか。太陽
系以外の惑星に地球と同じ環境をもつ星があり人間と同じような生物が存在する可能
性があるというレベルでは、社保庁の職員にも「何とかしなければいけない」と考え
る人がいることでしょう。

3年前に、東京都の某社会保険事務所に社会保険の申請に行ったとき、応対した職員
は白いカバーがかかった肘掛椅子にすわり、その「なんとか官」の給料の原資を納付
する善良な市民には、折りたたみの椅子が提供されました。官が民に下命し、民は畏
れながら納付しているような状況を経験しました。個人的な限られた経験からは、社
保庁の職場風土は、時代劇の代官と出入り商人越後屋、地元の有力者十手持ちのヤク
ザの親分そして年貢を納める貧しい農民という構図の中で、当然のごとく育まれてき
たものと想像します。

国家公務員ノンキャリアで定年まで勤めた人から聞いた話ですが、その人には東大を
はじめ一流大学卒の部下もたくさんいたそうです。彼らがキャリアを奪われた主要な
理由は、贈賄に関与したためだと教えてくれました。さらに、生活費と遊興費に困ら
ない公務員が無難に出世し、天下りができる高級官僚になる可能性が高いといいます
。豊かな良家の出身、もしくは良家の子女と結婚した役人は、小遣いに困らないので
出入り商人からの菓子折りはもらいません。贈賄に無縁、セレブの仲間入り、成金の
成り上がり者ではない経済的知的余裕。そうして、富める者はますます豊かになる仕
組みが形成されてきました。

何とかしなければいけないとしたら、まず、上から下までシャッフルがいいです。替
わりはたくさんいるでしょう。その職員でしかできないような業務が役所にあるとは
思えません。私企業だって、余人をもって変えがたいというのはレアケースですから
。現首相は、対応の悪い職員は新組織では仲間に入れないとコメントされ、ムチをつ
かってでも、だめな一般職員の更正をはかると納税者に訴えているようです。親方日
の丸の気軽でおいしい役人天国列車の行き先は、この夏の暑い盛りに、肘掛椅子に座
っているなんとか官たちには想定外の地獄行きに軌道修正してしまうかもしれません
。公務員と非公務員の多数決で、公務員の生産性を向上させるのは民主主義社会の正
当な意思表示です。

◆あとがき

新興市場が下げ止まりの気配と株屋さんの講釈が始まりました。去年の今頃も同じよ
うなことをいって彼らは暮らしていました。下げ止まらなかった1年を経過しての株
屋さんの後講釈です。身内に株屋さんがいたら、社保庁の職員がいる身内と同じよう
に肩身の狭い思いをするでしょうか。決定的に違うのは、株屋さんは、自己責任とい
う切り札を持っていることです。年金積み立ては、これからは国民の自己責任でと社
保庁の職員がうそぶく日がやってくるかもしれません。

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