金言−275:「怨憎会苦(おんぞうえく)」

広辞苑によりますと、八苦の一、怨み憎む者に会う苦しみを、怨憎会苦といいます。
四苦八苦のこの世の中で暮らしていると、嫌いな人間と出会うことはさけられないよ
うです。会いたいのに会えないのも、苦しみのひとつです。これを仏教ではなんとい
うのか知りませんが、都々逸の話の中にはこんな一節があります。「世の中は、カネ
と女が仇なり、早く仇にめぐり合いたい」

小学校の近くに、小学校の同級生が女将をやっている料亭があります。年に何回かこ
の料亭の前を通る機会があります。天気がよかったりして気分がいいと、予約なしで
ランチに寄ることがあります。そこで女将の小学校時代の昔話に付き合います。放課
後の掃除当番で廊下を走ったことが理由で、当時の担任教師にビンタをもらったこと
を覚えています。女将との昔話には、毎回こちらからこの教師のことを話題にし、い
つか会いたいといいます。女将から返ってくるのは、いつも同じです。「某先生は元
気です、連絡先は某君が知っています。」しかしながら、これ以上先に話は進みませ
ん。昔話はしますが、同窓会を開くというようなところまでは進みません。お互いに
覚えている同級生の当たり障りのない動向を話題にして一時間ほど食事を楽しみ、ま
た、それぞれの日常生活に戻っていきます。この教師に会ったら、「殴られたことを
忘れていない」ということを伝えたいと願っています。多少怨みに思っています。自
分が提供する怨憎会苦をこの人は味わっていません。もしかしたら、本件は怨み憎む
思いが不十分なので、怨憎会苦の対象にならないのかも知れませんが。

会えると念じていれば叶うといいますが、それから先には多分すすまないでしょう。
何十年も会っていない人にめぐりあえるのは、幸せなのでしょうか。当時とは環境が
変わっています。だから、見えざる手がこのままそっとしておいてくれるのかもしれ
ません。

◆あとがき

地球温暖化による異常気象が日常生活に影響を与えはじめているという事実を、無視
できなくなってきました。暖冬は異常気象で何年か何十年かの周期でやってくるもの
ではなく、これからは毎年当然のこととして暖冬になるとしたら、心配ごとが増えま
すね。暖冬も冷夏も長雨も干ばつも異常ではなく、日常的におこるものになると、近
未来の映画のシーンが現実のものとなり、少し前までの春夏秋冬の季節の移り変わり
が、過去の気象現象となります。首都直下型地震より先に、地球温暖化が日々の暮ら
しを崩壊させるかもしれません。

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