朝夕ずいぶんと涼しくなりました。12月決算の企業は1月からの新会計年度に向け
て、事業計画をほとんど確定していることでしょう。次年度の目標を達成するために
、人モノ金の保有原資の範囲内で、最善の事業組織を編成します。今ある組織を存続
させるために、事業計画を練るのではないということが、お約束のひとつです。
大きなプロジェクトを進めるときは、各フェーズで担当役員や社長の決裁が求められ
ます。そこで、経営幹部が必要な軌道修正をし、リスクの最小化をはかります。運悪
く、経営判断の誤り、経営環境の悪化によって、赤字プロジェクトになったとき、そ
の管理・営業責任は現場が負うことが一般的です。会社の存亡にかかわるような償う
ことのできない重大な損失をもたらした場合は、当然、経営者が責任をとることにな
りますが、通常は、企業としての事業の継続性を優先し、赤字プロジェクトのマネー
ジャーの首をとって落着とします。
稟議決裁と上司の指示によって、業務をしているにもかかわらず、損失が出たときに
決裁者は責任をとりません。経営幹部の指示どおりにやって失敗した場合に現場が責
めを負うのは不当だと、従業員は感じます。しかし、経営というものはそういうもの
だと、経営者は考えています。「損してもいいよ、責任はオレがとるから。」という
決裁はしていないのです。従業員の不始末をすべて肩代わりしていたら、経営者の首
はすぐにとんでしまいます。肝心の会社の存続が、危うくなります。経営者と株主は
、損をしないことを前提として、高い目標を設定し、前年をうわまわるパフォーマン
スを発揮してもらうことを期待しています。これに応えることで、資本家と賃労働者
がWINWINの関係を享受することができます。
一方、個人のレベルでは、一年の計は元旦にありということで、正月休みに何かしら
目標を設定します。それを紙に書いたり、神仏に祈願したりして、新しい年を始めま
す。こちらは、四半期ごとに見通しの開示も不要ですし、お願いした神仏に祈願成就
の進捗具合を尋ねることもありません。
会社の事業計画達成の主役の座からそろそろ降りる団塊の世代は、長年の勤め人のサ
ガのゆえに、今度は、自らが設定する「一年の計」を数値目標に読み替えて、四半期
決算と連動して年末達成に向けての上方・下方修正などを家族に開示しようとするか
もしれません。
まもなく、新しい年がやってきます。時間はまだ十分あります。「一年の計」を設定
し、設定したからには、途中で下方修正しないよう、がんばりましょう。
◆あとがき
フランスワインの新酒イベントの内容が今年は少し変わったそうです。まず、試飲は
飲酒運転を助長するので控えたそうです。次に某ビールメーカーは輸入量を前年比5
%削減し、売れ残りによる値崩れリスクの軽減をはかったといいます。それから、本
場フランスでは、ワインの消費量が10年前の半分になったそうです。フランスのど
こかのレストランで、女性たちがワインはアルコール度が高いので敬遠しかわりにコ
カコーラを飲んでいるシーンや、男性が「ワインは知識がないと楽しめないから、ビ
ールを飲む」というコメントが紹介されていました。フランスではワイン出荷量が減
り、現地の農家は減反し始めているといいます。もし、次にブドウの苗木を植えると
きは、日本人の好みに合うものにかえると生産者がいっていました。
フランス人がワインを控える傾向にあるということは、いずれ日本人にも波及してく
るはずです。昔、不凍液を混入したワインを見分けられなかった、「灰皿」みたいな
金属片を首からぶらさげている人たちは、今はどうしているでしょうか。いまだに、
セレブを相手にフランスワインの薀蓄を語り、高額なディナーのお供をしているにち
がいありません。世の中すぐには変わりません。しかし、油断している間に変わり始
めたら、その勢いはとまりません。