金言-193:潮時と待ち伏せ

コロッケが1個5円の頃の話です。父は、夏休みや冬休みになると、ハゼ釣りに連れ
ていってくれました。京浜急行が往復20円、餌のゴカイがお猪口一杯10円で、こ
れで1日楽しめ、釣ったハゼは正月の甘露煮になっていました。

体で覚えたのは、干潮時はどこにいっても釣れないということと、満潮の2時間前位
から満潮で潮が止まるまでが良く釣れるということでした。
良くあるのですが、釣り場に到着して最初の1投で喰いがあり、その後全く釣果がな
いという日があります。それでも、竿先を時々見つめたり海面をなんとなく眺めたり
して夕方まで、第1投の当りの次が来るのをじっと待っています。第1投はビギナー
ズラックのようなものです。その後、いろいろ工夫して釣果を挙げようとするのが釣
りの楽しみです。

魚は見えるところにいても、潮が動くまでは餌に喰い付きません。これが、いわゆる
潮が動き始める潮時ということでした。休日に30円で学んだことですが、これが実
業の世界(しがない勤め人として)で応用できるようになるまでには相当の時間と授
業料がかかります。何十年たっても、サクセスストーリーの潮時がよく分からないの
です。

魚釣りの場合は、潮時表があり潮時が分かります。だからといって必ず釣果が挙がる
とはかぎりません。ポイント設定や前日の天候、気温、海水温度、仕掛けの良し悪し
など不確定要素があります。同様に、ビジネスでも各種経済指標、業界動向、専門家
の見解、ニュースなどから、潮時が予想できそうです。事業も魚釣りも潮時というタ
イミングの事前予測は可能です。予測どおりになるときもあれば、外れるときもあり
ます。投資では、チャート、テクニカル分析が外れたときは、「だまし」といって済
ませます。

待ち伏せという手法があります。
将来性のある投資対象が、一過性のトラブルや風評、同業他社の不振などの影響を受
け一時的に企業価値が下落し、まもなく元に戻るという「押し目」が必ずあります。
コラテラルダメージ(仕方のない犠牲)のようなものです。必ず起きる、いつ起きて
も不思議はない、まだ起きていない、しばらく起きないだろうという「首都直下型地
震」は「潮時の待ち伏せ」のひとつです。発生日から数日は、ほとんどの上場企業の
株価は暴落するでしょう。しばらくすると、復興関連株が暴騰するにちがいありませ
ん。このXデーに備えて、証券口座を開設し、現金を用意します。いつ来るか予測で
きないが必ず来るその日をじっと待つということができれば、極めて勝率の高い蓄財
方法です。

待ち伏せは魚釣りとは違います。フライフィッシングなどは常にターゲットを誘う釣
り方ですし、置き竿では餌の鮮度が落ち、ターゲットにサプライズを与えることがで
きません。定置網の漁法には似ているかもしれません。「待ち伏せ投資」は有りだと
思います。しかし、待ち伏せしたポイントにターゲットが現れないかもしれません。
夕立の後の水溜りに網を張るようなリスクもありそうです。

雨乞いと同じです。雨が降るまで祈祷を続ける体力と気力が成功の秘訣です。

◆あとがき
今週は郵政民営化の参院での採決が予定されています。これと首相の靖国参拝が、直
下型地震より確実に、この夏の首都を激しく揺り動かすことでしょう。

この一番に優勝がかかった取り組みで、貴乃花が時間一杯まで気負いを感じさせなか
ったのには、驚きました。こんな小僧がと思わせない、年齢を超えたプロのパフォー
マンスでした。あの頃のあの若者のように、そのときまで、じっと平常心で臨みたい
ものです。

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