金言-186:やがてインド

SARSのほとぼりが冷めた頃を見計らって、起業した某マネージメントチームが期
待したのは、北京五輪から上海万博へと続く中国トレンドでした。

誤算の始まりは、東アジアがマスクだらけの次に来た鳥インフルエンザでした。
「夕方、カラスが鳴いていました。いつものことですが、今日のカラス君、ちょっと
声が変。カゼ声みたいに聞こえます。まさか鳥インフルエンザ。」

中国ビジネスの不確定要素が時間の経過とともに薄らいで受注活動が本格化すると、
今度はビジネススキームの優位性に疑問が生じました。日本企業のシステム開発にと
っては、中国は漢字をつかうダブルバイトの国なのでシングルバイトの欧米系より親
和性があると想定して、「中国での海外生産」を事業の柱にしました。イスラム圏と
接触する地域より地政学的なリスクは少なく、日本企業はすでに十分すぎる授業料を
海外生産(オフショア開発)に費やしています。わかりやすい優位性を掲げた事業で
したが、受注競争でインドに負け始めています。品質、価格、納期で中国オフショア
には圧倒的な優位性がないことが、何件かの失注で露見してしまいました。

そのような中で、抗日暴動が逆風となりました。平日はまじめに働く労働者にとって
、抗日デモは週末に町に出て暴動の一部分に参加してストレスを発散する安価なリク
レーションであったかもしれません。それをテレビで見た投資家は、チャイナリスク
を再認識しました。北京五輪ボイコットなどという極論を聞くと、投資家は静かに席
を立っていきます。

一方、反日感情が少ないのはインドネシアやインドだと聞きました。旧日本兵が独立
運動に参加したこともあり、抗日運動発生のリスクは低いと想像します。ただ、イス
ラム圏や英語圏なので漢字は通用しないのですが、グローバル化ということでハード
ルは高くすぎることはありません。地政学的リスクとか民族感情とか不幸な歴史とか
いうリスクはどこにでもありますが、これらのリスクを超えるほど重要なことは、取
引先の経営者が信用できるかどうかです。ビジネスモデルに優位性があり、明るい展
望がある企業で、経営者が正直であれば、中国でもインドでもリスクレベルは変わら
ないと考えます。

インドの巨大ソフト企業の会長が1970年代前半にパリで働いていた頃のコメント
を紹介します。
「当時のパリは、まだ政治の季節でした。世界中で噴き出していたあらゆる矛盾を目
の当たりにでき、貴重な体験をしました。そこで学んだことは、主義だけで世界は変
わらない、レトリック(巧妙な言い回し)は富を産まない。富を創れず、それを分配
できない者が世界を救うことはできない。パリでそれを知り、企業経営の道を志すよ
うになったのです。」(やがてインドの時代がはじまる。小島卓著)

やはり成功する人が考えているのは、「世のため、人のため」なのです。成功してか
ら考えるのではなく、考えている人が成功するのです。

◆あとがき

国営放送の受信料を払えと1年に1回は、玄関のインターフォンでいわれます。毎回
そうなのですが、最初は優しい声で始まりますが払わないというと声の調子が変わり
、近所に聞こえるように声を荒げ、不払いの罰則ができたら真っ先に来るぞと捨て台
詞を残していなくなります。隣近所とは付き合いがないので、聞こえたら近所にみっ
ともないとか体裁が悪いとかいう心配はないのです。向こう三軒両隣の隣組制度は戦
時中のなごりで、都市生活者にとっては、脅威ではありません。

不払いに罰則ができたらすぐに払います。税金と同じで延滞料は高いでしょうから。
見ていないのに支払えというので、これは暴力団の用心棒代、見かじめ料ですね。

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