もともと不動産会社で、保有していた土地を一か所にまとめると首都圏にある半島
ぐらいになり、その資産価値は社員とその家族を数年間養えると豪語していた時期
がありました。
社員とその家族の数は、何万人という規模だったそうです。
創業者は、一代で築いた企業集団を、何人かいた子供たちに会社を分割して与えま
した。その中枢のポケットカンパニーを相続したのは、正妻の長男ではなく、何人
かいた妾の年少者でした。今法治国家をお騒がせしている東アジアで権力を世襲し
ている一族にすこし似ています。
大きな違いは、親が遺した企業集団を複数の子が分割統治し、相手の商圏には不可
侵の紳士協定があったこと。この協定が守られている間は、分割がうまく機能して
いました。ところが、年長の兄弟が手掛けた多角経営が破たんし、キャッシュフロ
ーに窮すると、タブーであった領域、特に中枢企業の商圏にちょっかいをだすよう
になりました。
これにより、内部抗争が始まりました。骨肉の争いになり、ライバル企業との競争
よりも、グループ企業同士の潰しあいに資産が消費されるようになり、よくある結
末となりました。オーナー企業は、オーナーが会社のカネをどう使おうと勝手だろ
うという企業風土があります。経営者への求心力が低下すると、経営幹部もコンプ
ライアンスの優先順位を下げ始めます。
そういう近未来に不透明感がでてきても、多くの従業員は不安不平不満であふれた
船を降りようとはしません。昨今の東芝のように、たとえ東証二部に降格されても
親子二代で勤めた会社に未練が残り、捲土重来の見果てぬ夢をみます。
それなりの実績と自信と度胸がある従業員は、まっさきに飛び降ります。
でも、見限った船は予想を裏切りなかなか沈みません。
私が飛び降りた船は、沈むのに15年かかりました。
沈む直前の頃には、優秀な同期の何人かは全員役付役員になって事業縮小や資産売
却でメディアに露出していました。
思うに、皆それぞれの環境でその時その場で最善の選択をしてきたはずです。
15年後にどうなるかは、その時が来てみて初めてわかります。
それに、結果を気にするのは、意思決定した本人だけです。
良き時代を楽しみ、そして安心安全に今を暮らす。これなら後悔ありません。
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