金言−431:古き良き時代を懐かしむ

高校時代の多感な一時期に、将来の夢や希望を共有してたくさんのことを話しあい
、多くの行動をともにした仲間の一人が、2年前に伴侶を失いました。彼女が重い
病を患っていることはその3年前に知らされました。入院の知らせを受けたとき、
お見舞いに行くことを躊躇しました。

高校時代の仲間とはその後別々の道を選んだので、冠婚葬祭や季節のあいさつ程度
の消極的な付き合いになっていましたが、お二人の婚礼では、司会をさせていただ
いたこともあり、青春時代の想い出に欠かせない大事な方々でした。

お見舞いを遠慮したのは、辛い思いをしている二人を見たくなかったからでした。
当事者の気持ちを理解することも分かち合うこともできませんし、ましてや見舞う
ことで何かができるとは思えませんでしたので、修羅場に踏み込んで、大事にして
きた良き想い出が壊れることを嫌いました。

どのようにして伴侶の旅立ちを見送ったのか想像もできません。カウントダウンが
始まってから3年間、やり残したことがずいぶんあったと聞きました。高校時代の
ように物理的に時間と行動を共にすることはできませんでしたが、偲ぶ気持ちは昔
とかわっていません、故に遠くからお見送りをしました。

血のつながった家族と違い、いくら親しい間柄であっても、互いに知っていること
も理解していることも部分的です。相手がドアを開かない限り、こちらからプライ
ベートな部分に踏みこむことを遠慮してきました。一番いい時代を共有した仲間で
すから、その想い出を温存したいと思いました。

ただし、この美学はビジネスの世界では通用しないそうです。米国GM全盛期の会
長の名を冠した博物館で流されていた社史ビデオの結びの一節です。
「古き良き時代を懐かしむ人に幸せは来ない」

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