3月末に米国政府は自国ビッグ3自動車メーカーのGM・フォードに対して最後通
牒のような意思表示をしました。GMには60日、フォードには30日分の納税者
のドルを支給し、再建策の内容と期限を明示しました。これによりGM破綻懸念が
浮上し、やや楽観ムードがでていた市場に冷水をあびせました。
GMの破綻懸念が高まるなかで、ここまで追い込まれた米国車の長年の弱みが報道
されるようになりました。
1)海外仕様がないこと
米国車が日本市場に登場した当時、ヘッドレストが装備されていなかったので、日
本の販売代理店は自費で改造して市販したそうです。今でも、GMの尾灯は赤色で
、日本仕様のオレンジ色の方向指示灯は日本の代理店が改造しています。これは当
然日本市場で販売価格に上乗せされます。したがって、価格に見合う車ではない、
割高感がでてしまいます。海外市場と海外向け仕様変更はビッグ3にとって主要な
テーマではなかったわけです。極論すれば、進駐軍が自国で使う車を駐留国に有償
で供給するという感覚です。
2)製造コストが割高
同業の日本企業の人件費に比較して1.6倍とのことです。
3)海外仕様を追加しない
失敗例はスポーツ用品業界でもありました。
1990年代のドイツメーカーは、当時の日本人の甲高幅広の足にあわせたラスト
(足型)を開発せず、ヨーロッパ人の細長いラストのスポーツシューズを日本でも
販売していました。ヨーロッパで首位のメーカーは世界でも首位であるので、極東
の市場を重要視していませんでした。極東市場がドイツ企業の利益に貢献しても、
ドイツ人のモノづくりの感覚には影響を与えませんでした。
一私企業が世界的規模で業界首位を維持していると、自社の標準が世界標準である
と勘違いする恐ろしいリスクが高まることを証明しています。米国が巨額の税金を
つかってこのような殿様商売をしてきた企業をそのままでは救済しないことを明ら
かにしたのは、好ましい選択だと思います。