金言−376:とりあえずドロ船からは降りる

希望退職という誘いを従業員にかける会社が増えてきました。
そして、会社の募集者数を上まわる応募が出る会社が増えてきました。
すぐには回復しそうもない不況下で、勤め先が倒産するかもしれないと不安な気持
ちになる回数も増えています。

景況感が最悪なので、「とりあえずドロ船からは降りる」という気持ちになってい
る勤め人が増えていると思います。会社と運命共同体という愛社精神をもって減給
などを受け入れるのは、ゴーイングコンサーンの注記がない限り(会社の継続に黄
色信号が点滅していないこと)という前提条件があります。退職金の規定があって
も倒産してしまえば、給付されないかもしれません。危険信号が点滅したら、会社
に支払い能力がある間にもらえるものはもらっておこうという選択になります。先
行きが不透明な昨今、勤務先がドロ船となったと感じても、自分の定年まではなん
とか沈まないで持ちこたえるだろうという期待は、今ではかなりハイリスクなもの
になってしまいました。

一度だけ勤務先の事務所閉鎖の際、最後の後始末まで付き合ったことがあります。
当時は、業績不振ではなく親会社の事業再編が理由であったので、現在のような悲
壮感はありませんでした。転職先はまだあるという希望が持てる好景気という環境
下であったので、今まで経験したことがない清算業務をやってみようかという余裕
がありました。ドロ船と一緒に沈んでも、自力で浮上できると確信し、船を沈める
手伝いをしました。さらには閉鎖から2ヵ月後に行われた監査法人の監査にも無給
で対応しました。ただし、モラルは低下していますので、監査での些細な内容や回
答するためには非常に手間のかかる作業は、退職無給を理由に拒否しました。

あのとき学んだのは、敗戦処理は従業員のやる仕事ではないということでした。経
営者がやるべきことを、使用人がやってはいけません。達成感のない、楽しくない
ことには、可能な限り近寄らないほうがいいと学習しました。

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