金言−360:42型液晶テレビが9万8千円

1ヶ月ほど前、米国のビジオ社が42型液晶テレビを9万8千円で発売するという
報道がありました。自社で生産設備を持たず、外部の協力企業に生産委託をしてい
る同社のようなメーカーをファブレスといいます。逆に、他社からの委託による生
産を専門に手がけるメーカーをファウンドリといいます。自社工場を持たないメー
カーは、どこの協力工場でも同じような品質と数量が確保できるような製品につい
ては、価格競争において優位性が発揮できます。低価格良質がブランドイメージに
なります。

10月6日、シャープは2009年3月期の連結純利益が前期比41%減の見通し
と発表し、今期予想を下方修正しました。部品から最終製品まで内製するビジネス
モデルは上昇トレンドのときはシェア拡大の恩恵を大きく受けますが、昨今の世界
的な信用収縮による景気悪化局面では、販売不振で業績が予想以上に落ち込んでし
まいます。

1)米国のスポーツシューズメーカー
この会社がまだ世界一でなかった頃、世界一のメーカーであったドイツに本社を置
くドイツ人の会社は、熟練したマイスターが作り上げる伝統の技とマエストロの閃
きによる優れた製品というブランド戦略で、ドイツ国内でドイツ人がスポーツシュ
ーズを製造していました。一方、神戸のスポーツシューズメーカーの代理店から独
立した米国人経営者は、労働者の質と賃金を比較して、当時は割安であった極東の
半島に注目し、海外生産によってコスト削減をはかり、安価でも見劣りのしないシ
ューズを欧米市場に投入しました。今でいうファブレス型の商売です。その後、こ
の米国の会社は世界一になりました。

2)ファブレスの強みと弱み
強みは、100%外部委託により生産設備と人員を抱えないので、流行や景気動向
による受注の増減・生産調整などのコスト増から開放されることです。限りある資
産を、設計・営業・顧客対応に集中し、効率のよい事業展開が可能です。
弱みは、自前の工場を持たないので、製造ノウハウの蓄積や製品仕様や機能の機密
保持は困難ですし、生産・出荷の最終的なタイミングも協力会社の工場の都合次第
になることです。海外生産になると、為替差損やゼネスト・港湾ストなど政情不安
による納期遅れなどのリスクも追加されます。

3)ブリッジサービス
観光事業では旅行代理店がファブレスの業態に似ています。
消費者(ユーザ)は、宿泊施設・交通手段(メーカー)を独自に選択する煩わしさ
と、それをするためのコスト(時間・人員)を削減でき、また個別に直接申し込み
するよりも安価な価格が提示されます。それは、旅行代理店が希望小売価格よりも
安い価格で大量仕入れをしているからです。この旅行代理店の仕組みと同じように
、一定の仕組み(ソフト)を、利用する会社と製造する会社に置き換えることがで
きるとすると、利用する会社(ユーザ)にはファブレスを提案し、製造する会社
(メーカー)にはファウンドリを提案するサービスを事業とするビジネスモデルが
想定できます。このサービスを一部ではブリッジサービスといいます。

4)一品モノ
ブリッジサービスは、企業の情報システムの構築というITアウトソーシングでは
なかなかうまくいかないようです。情報システム構築というのは、ミッションクリ
ティカルな部分があり、うまくいかなければ次を試すというわけにはいきません。
時間とコストそれに企業の信頼性に重大な影響を及ぼす恐れがあるからです。実際
には主要な技術者だけが自前で、力仕事一切は協力会社の技術者がこなしている場
合が多いのですが、ユーザは、アウトソーシング(外部委託による生産)する際は
、協力会社(ファウンドリ)1社にアウトソーシングをすることを好みます。ファ
ブレスにアウトソーシングを依頼し、その先の実作業をファブレスが選ぶファウン
ドリに白紙委任する手法を嫌います。大量生産の工業製品を買うのと、ユーザ独自
の一品モノを注文するのとの違いかもしれません。

何はともあれ、リスク負担から逃げられない仕事は、自分の責任範囲を明らかにし
てその範囲に限ってリスクを負う仕組みを選ぶことで、損害発生時に多少なりとも
諦めがつきやすいと思います。

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