金言−337:獅子身中の虫

仏徒でありながら仏法に害をなす者、また、内部にいて恩恵を受けながら、害をな
す者をたとえて、「獅子身中の虫」といいます。このたびインサイダー容疑で逮捕
された証券会社の外国人社員(容疑が報道された時点で解雇されているので、現在
の身分は元社員)は、この虫に該当します。

以前、国会議員の私設秘書の違法行為が連続して表面化したとき、雇用者である当
該国会議員は「秘書が勝手にしたこと」で自分は無実だとコメントして、テレビの
評論家諸氏に飯の種を提供しました。残念ながら、利権には必ずからむ金権体質の
代議士が多いと考えられているので、秘書の悪さは、代議士本人の指示または暗黙
の了解があったと推定する有権者が多いと思います。
代議士秘書の恩恵を受けながら、代議士の利益のためではなく秘書本人が不正な利
益を得るために、代議士秘書になる悪い人がいるそうです。そういう悪い人を採用
した代議士本人の監督責任はあるのですが、悪い人が悪さをするためにもぐりこん
でくるわけですから、代議士先生は被害者でもあります。ですが、公の場で秘書が
勝手にやったと言い訳すると、大事な票を失ってしまします。

野村證券の外国人元社員は、入社早々にインサイダー取引に着手しているようなの
で、本件は会社ぐるみではなく属人的な犯罪となります。だからといって、社員個
人の不正行為なので会社はまったく関係がないと経営者が説明しても市場は許して
くれません。
コンプライアンスの一貫として、機関投資家は社内規則で不祥事やその疑いのある
金融機関との取引については、当局の処分や当事者からの説明があるまで取引を中
止します。この会社は、企業イメージが損なわれ、いくらか顧客を失い、減収減益
を招くかもしれません。

この会社の経営幹部は、次の指摘をしています。
1.悪意を持った社員の不正を防止するのは困難だが、対策は社員教育を徹底する
  しかない。
2.同質な企業文化に根ざしたあうんの呼吸による企業統治が限界を露呈した。

いずれも、社員教育が今後の課題となるということです。そもそも、年功序列、永
年勤続、終身雇用などにより、社員に安定した生活を約束して育んできた企業文化
が、あうんの呼吸による統治を経営者に許してきたのではないでしょうか。この1
0年あまりで、若手登用、能力・結果主義、契約社員など欧米企業では常識的な経
営手法を、グローバル化などという流行りことばを使って、大半の日本企業が導入
しました。伝統的な企業文化による恩恵に見切りをつけた経営者が期待した欧米風
のメリットは、いまだ形になっていないということでしょうか。

また、経営者サイドが徹底するという社員教育が、欧米流の社員教育を想定してい
るとしたら、もちろん、獅子身中の虫には良く効く殺虫剤となりますが、害虫では
ない従業員には、あの「ビッグブラザー」のリメイク版と感じるかもしれません。

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