金言-932:自分たちは大丈夫

泥船

債務超過、年商を超える累積赤字を抱える私企業は、金融業者がリスケで倒産を先延ばししても経営陣がすでに脳死状態なので再生は期待できません。金の卵を産む鶏を殺してしまっては利息がとれませんので、元金相当額の利息を徴収するまでは延命を優先します。ただし廃鶏にはしかるべき近未来が待っています。私企業の本質は収益力と成長持続性であります。
70有余年前、米国との戦争に負け、その後祖国復興を成し遂げた団塊の世代の親世代にとって、金融業者と上場会社と老舗は倒産しない会社と信じ疑いませんでした。それゆえ団塊の世代はしのぎを削って受験戦争を戦い、有名大学を卒業して大企業に入り、マイカー・マイホームとバブル最盛期まで右肩上がりの経済成長による甘い蜜を吸ってきました。その後の30年、生き残り組は当時蓄えた蜜の利息で食い繋いでいます。

終身雇用定期昇給でヒトを大切にする経営手法は、今では収益力と成長持続性の裏付けがないと商いの世界から退場を余儀なくされます。世の中には債務超過をリスケで延命しているのに、従業員の生活を守るとかいう話をする経営者がいます。こういうとっくに倒産しているはずの会社の経営者は、損切をしないで債務をパンパンに膨らませています。追証を迫られたら、進退窮まります。捲土重来はレアケースとわかっているのに、意思決定を先送りします。こういう泥船に乗っている従業員は大変気の毒ですが、川向うの野次馬には、泥船らしいと感じているのに乗り移る船が無いので泥船でも沈まないと言い聞かせて逃げないように見えます。経営者は藁をつかみ、従業員は経営者の足にしがみついています。給料2カ月遅配がお上に知られると経営者は書類送検されるから給料は貰えると信じ、レッドチャイナの農村並みの給料をあてにして、それなりに働きます。こういうネガティブな環境で暮らす勤め人は、昨今の我が国ではレアケースではありません。

では昔はよかったといいますと、そんなことはありませんでした。連日7時から23時まで休日返上のハードワークでした。カネはいくらかあるのに使う暇がないという忙しい毎日でした。もちろん泥船なんかありません、順風満帆で世界を肩で風を切って歩いていました。ハードワークで心身に障害を発症するとか、社命で違法行為をして御用になるとか、投機に失敗して生涯賃金を上回る債務を抱えるとか、あの頃も修羅場はたくさんありました。共通しているのは、自分たちは大丈夫と考える、いわゆる正常性バイアスです。

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