金言−487:高度情報処理技術者の「全くだめ」という表現

ソフトウェア会社に異業種から転職した当時、学習した表現方法です。
高度情報処理技術者たちは、何万行ものプログラムのなかに1個でも不適切な文字
があると設計したシステムが全く動かないという事象を複数回経験しています。
そこで日常業務の範囲外でも同じ視点でコメントすることがあります。たとえば、
書類の中に1文字誤字を見つけたとき、この書類は「全くだめ」と全否定します。

一方、アナログ稼業のプロフェッショナルたちは「大同小異」とか「大は小を兼ね
る」「木を見て森を見ず」とかいって、枝葉末節な部分に執着して神経質になるの
を嫌います。

大震災から1週間が経過しましたが、我が国のメディアに登場する大半の職業コメ
ント屋さんたちは、高度情報処理技術者のような視点でコメントしているかもしれ
ません。
そのおかげで、我が国の近未来に底なしの不安が膨らんでいるような気がします。

同じように、今回初めて耳にした「保安院」という平常時なら高級官僚にちがいな
い学力・知識・経験豊富な方々が原発事故に関して「可能性はゼロではない」とい
う表現をよく使います。

確かに
これから東京直下型地震が発生する可能性は、ゼロではありません。
北朝鮮が、明日、核ミサイルを打ちこんでくる可能性はゼロではありません。

しかしながら
これから先100年は大地震が発生しない可能性も、ゼロではありません。

1文字のエラーで日本の基幹システムが崩壊する可能性はロジックとして有りです
。たった1文字を24時間追いかけまわしてメシのタネにしている人たちもいるこ
とでしょう。でも、我が国は1文字のエラーで不具合が発生するというプログラム
で動いているようなきわめて複雑な電子システムではありません。1億人超の人の
動きはアナログです。

大震災後に、「さらなる被害発生の可能性はゼロではないだろう」と記者に追いつ
められて、原発当事者や専門家が、「まったく大丈夫です」と答えることは困難で
す。

一般市民としては、アナログの視点で「可能性はゼロではない」を言い換えれば、
「まず大丈夫であろう」という表現になると読み替えたいものです。

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