外資企業が使用人を雇うときは、即戦力の人材を選びます。ビジネスマナーすら習
得していないアマチュア新卒を雇って育てる時間と費用を負担するのを嫌うためで
す。だれでも最初は新人なので、欧米の学生には卒業する前にインターンとして希
望する企業に入りこみ、現場実習をする機会があります。
欧米先進国の後を追い、日本企業も中途採用で優秀な人材を確保してきましたが、
最近この流れに逆行する経営者がいることを知りました。「中途採用から優秀な人
材を探すのは、砂漠に落ちているダイヤモンドを探すに等しい」とのことです。
その理由
1)新卒者が日本企業に入ったとき、最初に教育を受ける相手は先輩の平社員また
はその上司どまり
2)相対的にレベルが低い人が新入社員を教育するので、ほとんどの新人は教わっ
た人のレベル以上には育たない
最初に教える先輩の資質が、その新卒使用人の企業での業務遂行能力のメインフレ
ームとなり、後に当人の努力が上乗せされて、企業の人材として育ちます。そこで
、中途採用に否定的なこの会社の経営者は、新卒社員教育は経営幹部が直接担当す
ることにしたそうです。経営者が最初に教えれば、かなりの新人は経営者レベル近
くまで育つ可能性が高いということです。
この経営者の話を聞いて、昔、赤坂の某ホテル宴会場で食中毒事故があったときの
顛末を思い出しました。この事業所の責任者である現職支配人に対して、オーナー
経営者は責任を追及しませんでした。意外にも、当時のオーナーが責任を追及した
のは、この宴会場開業事の支配人でした。当時は子飼いの使用人を温存させるため
だと感じました。中途採用に否定的な前述の経営者風に考えれば、宴会場開業時か
ら勤務している使用人の教育責任者は、開業時の支配人となります。そして、事故
を起こした現場の主な使用人はこの宴会場開業時からの人たちです。したがって、
事故の責任は開業時の支配人が負うという論理になります。オーナーが正しい判断
をしたとは思えませんが、理屈は納得できました。
20年以上前のエピソードですが、中途採用をやめて、新卒を経営幹部が直接教育
するという逆張り的な発想転換は、残念ながら思いつきませんでした。相対的にレ
ベルの低い先輩の指導を受けて勤め人を始めた者の限界ですね。