金言−330:いいですな。

勤務先に自家用車で通勤していた頃の話です。
当時の外務大臣は園田さんでした。この人はラジオコントロール(ラジコン)の業
界では大物愛好家の一人で、ビジネスショウの常連の来賓でした。そのラジコンの
ひとつにヘリコプターがあります。当時ラジコンヘリのメーカーは日本には2~3
社しかなく、機体とコントローラーは非常に高価でした。機体そのものはそれほど
高価ではないのですが、頻繁に墜落または、毎回のようにローターが破損するので
、お金がかかる上に、実際に飛ばせる安全な場所が限られていたので、機材一式を
運ぶのに車が必要でした。さらに、晴天微風の日に休みがとれるというのが必須条
件になります。こういう条件をクリアする人は、模型メーカーの人や模型屋の親父
さん、そして不労所得者(家賃収入)です。マンションのオーナーは、髪結亭主み
たいなものです。何しろ昼間はひまなので、模型メーカーの技術顧問の肩書きは歓
迎され、新製品の試験飛行やモニターを喜んでしてくれます。今なら、週末TVの
魚釣り番組の名人のような立場の人たちです。

東京の広尾にあるマンションの大家さんと、青山にあるマンションの大家さんがよ
く当時の職場に遊びにきてくれました。なにしろ、大家さんたちは、日中ひまで、
今日は何をして暮らそうかと朝から悩んでいる人たちですから、何かのきっかけで
気にいると、毎日通ってくれます。二日酔いでない日は、ほとんど毎回ランチのお
誘いがありました。広尾のマンションの大家さんは、清水明さんとおっしゃいまし
た。青山は田中さんで、淡いグリーンのキャデラックに乗っていました。当時現職
の園田外務大臣をゲストに招待したラジコンの大イベントを仕切った翌年に、残念
ながら亡くなりました。生前、清水明さんがよく口にしていた言葉が、「いいです
な」でした。何かをするときの基準は、「いいですな」という気持ちになるかなら
ないかでした。六本木でおいしい酒を飲み、高輪の古稀殿で好物の五目堅焼きそば
を食べ、仲間とラジコンヘリの話をするとき、「いいですな」と何回も口にされま
した。「幸せだな」と本人が感じたとき、「いいですな」という言葉がでてきまし
た。水野晴郎さんなら「映画って本当に素晴らしいですね」というでしょうね。

最近GYAOの無料映画で見た役者の清水健太郎は、「雀鬼」のシーンで「いいよ
」といいます。仲間が持ち込んでくる無理難題を、「いいよ」と二つ返事で快諾し
ます。そして一か八かの勝負では、楽しくなければだめだといいます。ハイリスク
・ハイリターンの案件を、楽しんでこなすところに、「いいよ」という一言がうら
やましく聞こえてきます。

清水明さんは、相手を受け入れているときに、「いいですな」と相槌をうちました
。仲間が何かをするとき、自分の肯定的な気持ちを「いいですな」で表します。思
えば、何かをするとき、いつも清水明さんに「いいですな」とやさしく背中を押さ
れてきたような気がします。これでもかと次々に発生する困難な状況に際しては、
楽しくしのげるように、これからもそしていつまでも、「いいですな」「いいよ」
と、やさしく自問自答していきたいものです。

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