1980年代初期、バブル最盛期の少し前、まだ転職とか独立開業が年功序列の社
会制度の中で異端として問題になる古き良き時代でした。離婚も簡単ではありませ
んでした。
「社員の退職」
社員が辞めたいというと、この社員を採用した当時の責任者と最初の配属先の当時
の職場長が管理教育責任を問われました。
社員が不祥事を起こすと、採用時の配属先事業所の責任者が事情聴取を受けます。
現在の上司ではなく、最初に教育をした当時の上司に責めがまわってきます。この
ような社員にしてしまったのは、最初の上司の社員教育やら管理やらに問題があっ
たと、経営者は考えました。
「転職活動」
会社に不満と限界を感じた社員は転職を考えます。退職予備軍には厳しい掟が用意
されていました。就業中に転職活動を行った者は、懲戒解雇です。わずかな退職金
をもらえなくなります。
通常、社内の関連職場をまわって、退職のあいさつをします。職場長たちは、「次
はどうする、困ったときは相談してくれ」とやさしく囁きます。このとき、具体的
な再就職先や、求職活動について口がすべると大変なことになります。就業中に転
職活動をしたとみなされ、退職金の支払い処理が保留となります。人事担当者のな
かには、このような事例を辞めたいという社員に説明してくれる良い人もいます。
「解雇」
いい時代でした。リストラという解雇は、バブル期には存在しませんでした。フッ
トワークがよく、能力に自信のある社員は転職によるステップアップに挑戦してい
ました。
「現状」
ご存知のように、人件費削減で利益を確保しようとする会社では、リストラ対象の
社員の転職活動は熱烈歓迎です。リリース対象社員をまず現場から隔離し、1ヶ月
間転職活動に専念するよう告知します。いまでは、会社は離職者に細かい業務引継
ぎを期待せず、従業員は出社無用で求職活動をしなければいけない時代になってい
ます。
あの頃は、いい時代でした。失ってから気がつく幸福感みたいなものでしょうか。