金言−394:町の床屋さん

1000円で調髪ができる低価格バーバーが出現するまでは、町の床屋さんの経営
は安定していたはずです。最近の町の床屋さんは3800円程度ですが、同じ程度
のサービスを1800円で提供する低価格チェーンが増えています。さらにはカッ
トだけで1000円という店も繁盛しています。効率の悪い個人経営の店は、マス
ターが体調不良になると休業に追い込まれてしまいます。

昔は良かったと引退したマスターが話してくれました。床屋は世の中の好不況に左
右されず安定した収入があったそうです。景気が良くても悪くても、髪の毛は伸び
、1~2ヶ月に1回は床屋に通うからです。バブルの頃、このマスターはお客さん
が口にする景気の良い話を聞きながら、世の中の景気が良くなったといっても床屋
に来る回数は倍増しないから、この商売は儲からないといっていました。

マンションを転売して儲けたサラリーマンや、高額のインセンティブを稼ぐ車のセ
ールスマン、銀座で豪遊する不動産屋や株屋を相手にしながら、床屋のマスターは
安定した公務員のような生活を楽しんでいました。儲けている人にとって、収入が
増えない仕事を選ぶ人の感覚は理解できないと思います。儲けていた人が損してい
る人に変わったときに、床屋のマスターは収入が減らないでいいなと思うかもしれ
ません。

しかし、昨今、低価格、価格破壊の同業者が出現し、町の床屋さんには閑古鳥がな
いています。調髪・髭剃り・シャンプーで半額の1800円、しかも30分程度の
スピードです。個人経営の床屋さんは、価格とスピードで低価格チェーンには勝て
ません。

1800円と3800円の違いは、マスターの人柄でしょうか。1800円のチェ
ーン店はコンピュータで顧客管理し、いつだれが担当してもデータを見て前回と同
じ調髪をしてくれます。世間話は一切しません、決められた手順で決められた時間
内に決められたレベルの調髪をしてくれます。一方、町の床屋さんではマスターの
その日の気分が調髪に影響します。ご機嫌の良い日は、マスターの丁寧な仕事とた
めになる世間話で常連客は楽しいひと時を過ごします。

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